春休みに3週間ほどインターンシップに参加してきました. いろいろと思うところがあったので, 参加した感想を書いていきます.

経緯

近年ではインターンシップ(以下インターン)が盛んに行われています. 就職活動には関係ないという建前で行われているのがほとんどですが, 実際には就活の選考に有利に働くことが多いようです. 就活に出遅れるのも得策ではないと思い, インターンに参加してみました.
具体的なインターン先は述べませんが, ITベンチャーとかではなく, いわゆる Japanese Traditional Big Company です. 多分, 日本人なら誰でも知っている企業だとは思います.
応募したきっかけは, そこに就職する先輩がいたことと, 大学OBが学内でそこのインターンの紹介をしていたからです. 非IT系の企業ですが, 配属先はICTでソリューションするような所でした.

インターンの感想

インターン先が日本を代表するような大企業ということで, 技術力が高く能力の高い人材が集まっているんだろうなという漠然としたイメージを持っていました. あとは, 例えばプロジェクトXみたいな熱い仕事を行っているのかなというイメージもありました. そして実際にインターンに参加してみると, 前まで抱いていたようなイメージがガラガラと音をたてて崩れていきました.

職場環境

まず衝撃を受けたのが職場の貧弱な環境です. 与えられたコンピュータは メモリが4GBで32bitなWindows がインストールされており, インターネットにはつながっていませんでした. さらにエディタなどは一切インストールされておらず, 使えるブラウザはInternet Explorerだけ.1 しかもソフトウェアを1つインストールするのにも色々と申請が必要だそうです.
“GNU/Linuxは流石に使えないのかなー” みたいな心持ちで参加した私にとって, 与えられた環境の低さは驚愕でした. そもそも32bitの環境なんて, 私が高校生のときにはだいたい消え去ったと思っていました.
さらに言えば, 主な連絡手段はメールどころか電話で, Slackのようなコミュニケーションツールは導入する気配が一切なかったです. そして出社・退社するたびにホワイトボードのマーカを付け替えるという前近代的なことを未だに行っていることに驚きました. 曲がりなりにもICTでソリューションするはずなのに, この環境でどうやってICT技術を活用していくつもりなのか不思議で不思議でたまりませんでした.
私はこの環境でメモ帳を開き2, Gitもないのでコメントアウトを駆使しながらプログラムを書いたり, PowerPointでスライドを編集したりしていました. この経験を通じてバージョン管理ソフトの有用さと, AtomやEmacsといったテキストエディタの偉大さを実感することができました.
職場環境からは少しずれますが, 会社のスポーツ大会に若手の いかにも運動が苦手そうな人 が駆り出され, 半ば強制的に参加させられている話を聞いて悲しくなりました. 最近ではお仕掛けラグビー3が話題になっていましたが, 似たような話は他のところでもあるんだなと思いました.

社員のレベル

次に驚いたことは, 関わった社員さんのほとんどが技術に興味がなさそうだったことです. プログラムを外注しているせいか, プログラミングに興味ある人には出会えませんでした. それに, 今の職場環境をそこまで不満に思っていなさそうだったことにも驚きました.
飲み会の場でも技術的な話題は交わされず, 風俗に行ったときの話などレベルの低い会話がなされていたことは非常に悲しかったです.4
また人事関係の方が会社の業務説明をしてくださったのですが, この会社がICTを活用したソリューションに力を入れているという内容の 素晴らしいプレゼン をされていました. プレゼン自体はすごいなぁみたいな感想を抱いたのですが, 実態は10年くらい遅れた社内環境で業務をこなしているわけで, そのギャップにすごい違和感を感じました. プレゼンだけでは実態を知ることはできないのだなと感じました.
また他のインターン生を見ても, 理系大学生(大学院生)ではあるものの, 技術にさほど興味はない雰囲気の人が圧倒的大多数でした. 私は技術系サークルに入ったこともあり, 人間ならプログラミングか電子工作か機械工作のどれかは出来るよねみたいな雰囲気5のなかで大学生活を送ってきたので, 他のインターン生との価値観の違いにちょっと戸惑いました. 趣味でちょっとプログラミングするみたいな話をしても6, すごいね〜みたいな反応になってもどかしく思うことがありました. 当然ですが他のインターン生は職場環境に不満なんて抱いていなさそうでした.

業務内容

直接的な業務内容は書けませんが, 業務時間の多くをPowerPointでの プレゼン作成 にかけていることは, 予想通りでもありつつ残念でもありました. また, プログラムを外注するための要件定義やフローチャート作成を行う様子を見ていると, その時間で自分で実装したほうが速いんじゃないかと素人ながら思えてしまいました.
大企業ならではの, マネジメントや資料作成を重視した労働スタイルが私の価値観と合わなかったのでしょう. ただ, 楽しそうに仕事をしている社員さんの姿もあまり見れなかったので, 私の価値観が変わっているだけではないとも思いたいです.
あとは, エンジニア7としてのキャリアパスは存在するものの, 管理職にならないと昇給しない制度も見ていて非常に残念でした. 社員の方は, エンジニアとしてのキャリアパスが存在していることを強調されていました. ただ, 管理職にならないと昇給しない制度のもとでは全く魅力的に思えませんでした.

結局どう感じたのか

職場環境や業務内容もさることながら, 技術的に尊敬できるような社員さんに出会えなかったことが一番残念に思いました. 所属しているサークルには私なんかよりはるかにすごい人が, 後輩を含めてごまんといるのに, インターンの配属先にはどうしていないんだろうかと感じました.
きつい言い方をすれば, それなりの学歴8さえあれば大学時代遊んでいても入れてしまう企業9では, 大学時代は遊んでいたような人が社員の大多数を占める ということなのでしょうか.10
また職場環境も, 入社してから(転職しなければ)40年程度この環境で働き続けると考えると厳しいなと思いました. 久しぶりにMicrosoft Windowsを使ったのですが,11 すごいストレスフルで自分が社会に適合できなくなっていることを実感しました. それだけでなく, 最新技術とは無縁の環境にいるとエンジニアとしてのレベルが下がっていくのではという不安も抱きました.

インターン先の良い所

悪い所だけひたすら書いていましたが, 良い所もありました.
まず挙げられるのが, 人としてまっとうな価値観を持った社員さんがほとんどだったことです. いわゆるパワハラとはほぼ縁のなさそうな人が大多数で, 脳みそに筋肉しか詰まってなさそうな人や, 理不尽な発言をする人は見かけませんでした.
また, 技術職ではあるものの最新のトレンドを追いつづける必要はなく, それでいて日本の平均よりは良い給料をもらえるというのは悪くないと言えると思いました. 特に資料作成などの本質的でない業務に多くの時間を割いてもそれなりの給料がもらえるのは面白いなと感じました.

結論

一般にインターンの目的は, 自分の中の労働のイメージと実際の労働のイメージのギャップを縮めることだと思います. インターンに参加してがっかりしたことは多かったものの, ギャップを縮めることはできたので意味がなかったわけではないでしょう. とは言え3週間ずっと参加し続ける価値があったのかと問われると怪しいですが.
一方で自分の進路については結構考えさせられました. 私が望む環境が満たされている企業はそんなに多くはないんじゃないかと思うようになりました. 他の伝統的な大企業の技術職も似たような感じなんだろうなと思ってます. ただ私自身たいした実力もない学生なので, プライドばかり大きくしてもしょうがないんですよね.
幸いにも就職活動の開始まではあと1年程度あるので, 色々とチャレンジしていけたらなと思います. あとは, 私に合ったインターン先とかないかなと思っていますがどうなんでしょうかね.

おもしろ案件コーナー

最後にインターンで面白いと思ったことを列挙しておきます.

  • “去年のインターン生は顔で選んだ. 有名じゃないジャニーズタレントにはなれそうなレベルの美青年を選んだ.” — 別部署の部長さん
  • “Node.jsってなに?” — ICTをソリューションするような部署の社員さん
  • “君C++が好きなの? Cやアセンブラじゃなくて?"12 — ちょっと偉い人
  • “要件定義とかをちゃんとやるにはプログラミングの知識が必要だから難しいんだよね."13 — 社員さん
  • “起立! 気をつけ! 礼! 着席!” — インターンのオリエンテーションにて
  • “平日の睡眠時間はだいたい3時間くらいかな” — 管理職の人

  1. インターネットにつながってないのに何故ブラウザと思うかもしれませんが, 実はリモートデスクトップでインターネットにつないでいるコンピュータのブラウザの画面を表示させていました. ↩︎

  2. 多分いろいろお願いすればエディタをインストールすることはできたのだと思いますが, もうインターン先に期待していなかったので, 諦めて唯一インストールされていたエディタであるメモ帳をつかっていました. ↩︎

  3. GAFAに人材流出防げ NTTコムの新キャリアパス|出世ナビ|NIKKEI STYLE ↩︎

  4. 友人同士でも風俗の話なんてほとんどしたことなかったので, 風俗に行きその時の経験を話のネタにするという価値観を持ったコミュニティがあることに驚きました. ↩︎

  5. そして圧倒的に強い人や何でも出来る人を見て, 自分の技術力のなさに悲しくなるところまでがセットです. ↩︎

  6. 本当にプログラミングをしているのかと問われると怪しいレベルのコードしか書いてないので, 見苦しい発言ではありました. ↩︎

  7. 本当にエンジニアと呼称していいのか怪しい所はありそうですが, とりあえずエンジニアと呼んでおきます. ↩︎

  8. 学歴は最終学歴を意味するので, 正確に言うと学校歴です. ↩︎

  9. 就職活動には全然詳しくないんですが, 旧帝大理系修士卒とかであれば志望すれば半分以上の確率で入れそうな印象があります. ↩︎

  10. じゃあお前はこんなことを言えるだけの能力があるのかと言われたら, ごめんなさいと謝るしかないのですが. ↩︎

  11. 実のところゲームするときはWindowsを使っているので, Windowsを日常的に使ったのが久しぶりという感じですね. ↩︎

  12. この発言はそんなに嫌いなわけではないのですが, Cやアセンブラでの手動最適化が好きな人が未だにいるんだなと思いました. ↩︎

  13. この発言も言ってることは正しいと思いますが, プログラミングをまともにしないまま要件定義をしているところがこの企業らしいなと思いました. ↩︎